一般的にゲーマー用のGPUといえばNvidia GeForceで最も多くのシェアを誇っており、AMD Radeonはその後塵を拝している。(Intel Arcはまだ黎明期なのでここでは割愛する。)
筆者自身は2018年からRX 570、RX Vega 56、RX 5700XT、RX 6900XT、RX 7900XTXと5世代にわたってRadeonを使ってきた。この5年間Radeonを使ってきて困ったことは数知れない。今回はその中でも発生頻度が多かった不具合、Radeonを使っていて気になる点を書いていく。ただし、この記事に書かれている不具合がどのRadeon環境のPCでも起きるわけではないし、Radeonが一切だめだということを言いたいわけではないことには留意していただきたい。
筆者のPCのスペックは以下にまとめておく。
CPU | AMD RYZEN 9 7950X |
CPUクーラー | NZXT Kraken X62 |
メモリ | Acer Predator Pallas II DDR5 6000MHz 32GBx2 |
グラフィックボード | Sapphire Nitro+ Radeon RX 7900XTX Vapor-X 24GB |
マザーボード | ASUS ProArt B650 Creator |
電源 | NZXT E850 |
OS | Windows 11 24H2 |
グラフィックボード ドライババージョン | AMD Software: Adrenalin Edition 24.12.1 |
実際に起こったこと
1つ目
1つ目はクロックが安定しないこと。Radeonではコアクロック、メモリクロックともに1MHzという非常に細かい単位でクロックを制御している。これにより、Radeonはアイドル時に5W程度と非常に少ない消費電力を実現できるのだが、ゲームでは結構困る問題が起こる。それは負荷が低いときにクロックが上がりきらず、フレームレートが安定しないというものだ。これに関してはゲームの設定を上げれば大体の場合は改善する。ただ、Minecraftなどそもそもゲームの負荷がそこまで高くないタイトルや、相性が良くないタイトルだと設定を上げても効果が薄い。5年以上変わってないのでこれが改善するという期待はできないだろう…
実際にMinecraftを用いてどのような挙動をするかを録画してきた。このように負荷が軽いゲームでは性能を最大限発揮することができない。
2つ目
2つ目は安定しないハードウェアエンコーダだ。皆さんDiscordは使っているだろうか?ゲーマーなら一度は触ったことがあるという人が多いだろう。Discordではボイスチャット中に自分のゲーム画面を配信できるのだが、配信中ときどき途切れてしまうことがある。これに関しては再度配信し直すくらいしかできないのが困りどころだ。デコーダーにも問題がある。RX 6000シリーズまではそもそもハードウェアデコーダーが4K60FPSまでしか対応してなかった。GeForceでは2016年に発売されたGTX 10シリーズから8K60FPS動画の再生に対応していた。RadeonもRX 7000シリーズからはAMD Radiance Display Engineとなり、ハードウェアエンコーダ、デコーダーともに8K60FPSまで、そしてAV1コーデックにも対応したのだが、4K60FPSの動画をYouTubeで再生しているときにシークバーをいじると再生されるのに少し時間がかかる。筆者は普段Firefoxを愛用しているため、Firefox特有の現象の可能性もあったことから念の為Chromeでも試しておいたが、結果は変わらなかった。RX 9000ではAMD Radiance Display Engineが改善されたとのことなのでどうなるかはわからない。
YouTubeにある8K60FPSの動画を再生したときのタスクマネージャーのVideo Codec Engineの様子だ。使用率がRTX 4090と比べても高いことが見て取れる。
3つ目
3つ目は一部のゲームで描画に不具合が起こることだ。基本的にゲーム開発者は最もユーザー数の多いGeForceに焦点を合わせてゲームを開発している。そのため、Radeonでゲームをプレイすると稀に描画に不具合が起こることがある。筆者がプレイしたことがあるゲームでなおかつ有名なタイトルだと、Overwatch2では、AMD Softwareから設定できるゲームのテッセレーションモードをAMDの最適化にしている場合、フレームレートが極端に高いときにUIが見えなくなることがある。他にもApex LegendsではDirectX12でプレイしていると、ところどころ謎の光源の反射が発生してしまうことがある。AMDのVulkanドライバには不具合があり、これも修正されていない。ゲーム中に上記のような不具合が起きてしまう可能性は頭の片隅においておいてほしい。
現在は発生していないが、以前筆者の環境で起こった描画バグを撮影した動画を2つ掲載しておく。1つ目の動画では断続的にフリッカーが発生している。画面が高速で点滅するため、見る際は注意していただきたい。2つ目の動画は振り向いたときにGPUの使用率が急激に低下したことでスタッターが発生している。
4つ目
4つ目はCUDAに対応しているソフトウェアがそのままでは使えないことだ。最近はAIブーム、そのAIソフトに特化した演算にはCUDAが必要だ。Radeonでもできなくはないが、WindowsでCUDA互換の機能であるROCmを使うためには非常に手間がかかる。例えば、Stable Diffusion WebUIをCUDAを使った場合と同じように使おうとすると、まずWSL2をインストールする必要がある。そのうえでコマンドライン上で必要なソフトウェアをインストールしたうえで起動する必要性がある。仮にそこまでやって起動しても、悲しいことにRX 7900XTXでもRTX 4070Tiにも劣る生成速度しかでない(Toki SDXL BenchmarkをStable Diffusion WebUI Forge版で走らせたところおおよそ3.6it/sだった)。VRAMの使用効率も悪く、SDXL系のモデルだとVRAMが足りなくて生成できないこともある。そしてWSL2という仮想環境で動かしている以上、メインメモリの使用量も馬鹿にならない。
実際にWSL2でUbuntuを実行し、そこにROCm版のPyTorchをインストールしてStable Diffusion WebUI Forgeを実行しているときのタスクマネージャーの様子だ(1枚目)。Forge版なのでメモリやVRAMが標準よりも少なくても実行できるものだが、それでもたくさん使っている。モデルの準備中にメモリの使用量は35GB以上にまでなっていた。2枚目はAutomatic1111版を使用した場合のタスクマネージャーだ。VRAMは完全に使い切ってしまっているしCompute 0の使用も不安定だ。速度はForge版の3.6it/sに比べその半分程度の1.64it/sしか出なかった。
5つ目
5つ目はVRでのお話だ。筆者はVRヘッドセットとしてPimax Crystalという高画質機を使用している。解像度は5760×2880、リフレッシュレートは120Hzと非常にPCに負荷のかかる製品だ。このようなヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を使用してVRChatをやっていると結構困ることが起きる。相性が悪いのか筆者の環境ではVRChatを起動すると結構な高頻度でドライバがタイムアウトする。こうなると再度VRChatをVRモードでやるには、それに関係するソフトウェアの再起動が要求される。(筆者の場合はPimax Crystalを繋ぐためのPimaxPlay、Pimax Crystalのアイトラッキングのデータを取るためのBroken Eye、Steam本体、SteamVR、VRChatとなる)
そして再起動したとしても再びドライバがタイムアウトすることは何度もあった。
ほかにも、VRChatの設定でアンチエイリアスをx2だとしても入れている場合、ミラーをつけた場合にフレームの残像のようなものが発生する。VRChatではミラーを多用するため、このような現象は看過できない。ただし、筆者のHMDは冒頭にも述べた通りPimax Crystalで、より一般的なHMDであるMeta Quest 3の場合ではここまで高負荷にならないし、Pimaxのソフトウェア自体の問題の可能性もあるということは理解しておいてほしい。
※追記:先述のHMDの残像の件だが、AMD SoftwareからVRChatにおいてAnti-Lagを無効化したところ大幅に減少した。意外なところに罠があった。ただそれでもCPU負荷が高くなると残像が多少発生してしまう…
その他気になる点
6つ目
6つ目はワットパフォーマンスの悪さだ。これはAMDの悪いところで、少しでもパフォーマンスを見せようとかなりギリギリまでクロックや電圧を上げている。そのため、デフォルトでは非常に消費電力が多くなっている。それなのにファンの設定は静音性重視で回転数が低めに設定されており、かなり熱が籠りやすい。一部のサイトでは、GPUの低電圧化をおすすめしているところもあるが筆者はあまりおすすめしない。特にRadeonを初めて触ると言う人はなおさらだ。電圧を下げれば確かに消費電力や発熱は減るし、その余裕分ブーストクロックも上がるのだが、同時にドライバがタイムアウトする可能性も高くなる。そのため、ファンの設定を調整するくらいに留めておくのが無難だ。
7つ目
7つ目はRX 7900シリーズのリファレンスモデルで発生した不具合だ。筆者がいつもPC関連の雑談をしているDiscordサーバーで、RX 7900XTX及びRX 7900XTのリファレンスモデルを購入した人がいたのだが2人とも不具合を引いていた。その内容が、冷却に用いているベイパーチャンバーに不具合があり、低負荷時でもコア温度は50~70℃程度なのにホットスポット温度が115℃にも達してしまうというものだ。いくらファンを最大速度で回してもホットスポット温度が限界まで行くのは変わらない。これではまともに使えるとは言い難く、RX 7900XTXを買った人の方は初期不良交換をしたのにもかかわらずまた不具合を引いていた。冷却性能的にも各社から出ているカスタムクーラーを採用したモデルのほうが高く、リファレンスモデルを積極的に選ぶのは控えておいたほうがいいだろう。
8つ目
8つ目は初期ドライバの安定性とパフォーマンスだ。Radeonは発売されて時間が経ってからドライバの品質が成熟してくる傾向にある。また、製品自体の値段も発売当初は割高で、少しずつ値段が下がっていく傾向が年々続いている。そのためRadeonは発売直後に買うよりも、1年程度経って情報が拡充し、ドライバがある程度改善されてから買うほうが好ましい。しかし新製品のパフォーマンスが最大限発揮できずに世代交代目前になってまともになることもあり、消費者にとっては悩ましい選択を迫られることになる。
9つ目
9つ目はRadeonの情報量の少なさだ。RadeonはRX 6000シリーズがある程度GeForceと拮抗した性能を叩き出した功績によって、今でこそ最低限の情報は日本語でもそれなりに出てくるようになった。しかしそれでも最大のシェアを誇っているGeForceと比べるとその数は雲泥の差で、日本語で検索してもヒットしない情報もある。そのためトラブルが発生した場合にその内容を調べる難易度も高い。英語やドイツ語の記事を見ても解決に至らない場合もある。それ以外にも一般的な不具合を調べるにしてもある程度PCのトラブルシューティング能力が求められる。そのためRadeonはおすすめしにくいグラボとなってしまっている。
10個目
10個目はカスタムクーラーを搭載したサードパーティ製のグラフィックボードの選択肢がGeForceと比べて限られている点だ。基本的にグラフィックボードメーカーは需要が見込まれるNvidiaのグラフィックボードに全力を注いでおり、AMDのモデルでは最上位シリーズが無いなんてこともある。デザインの選択肢も限られてくるため、好みのグラフィックボードを探すのが少し難しいかもしれない。ただAMDのボードしか作っていないSapphireやXFXといったメーカーのグラフィックボードもあるのでここは一長一短ではある。
あとがき
今回Radeonに対して筆者が思っている不満点を可能な限り書き出してみた。実際Radeonにもいいところは色々ある。どんなゲームでも使えるフレーム補間機能AFMF2、値段あたりのVRAM容量、VRAM帯域の広さ、ライバルに対するコストパフォーマンスの良さ、少ないアイドル消費電力。これらの特徴をみて「Radeonを使ってみたいけど…」という人はこの記事を読んで、それでも大丈夫という自信を持てるなら買ってもいいと筆者は考える。今後Nvidiaに拮抗できる製品を作ることができるかは不透明ではあるが、Radeonを応援したいという人や、トラブルが好きな物好きな人は今から使ってみるのもいいだろう。
余談になるが筆者がRadeonに乗り換えたのにはちゃんと理由がある。当時筆者はGTX 1060にWQHDのモニターとFullHDのモニターを組み合わせて使っていたのだが、ウィンドウモードで動いているアプリケーションがとにかくぼやけて表示されるという問題に苛まれていた。その問題の根本的解決のために乗り換えたのが筆者がRadeonを使い始めたきっかけとなる。個人的にはIntel Arcが2代目にしてとてつもない性能向上を果たしたのでちょっと期待している。AMDとはいい勝負ができると思うし、そうなればRadeonも本気を出してくれるだろう。
For the Glory of AMD!
A_Z_Kornoha
【Radeon】を選ぶ場合に見てほしい、10の懸念点
GPU その他 ソフトウェア 解説A_Z_Kornoha 2025年1月17日 2025年1月11日一般的にゲーマー用のGPUといえばNvidia GeForceで最も多くのシェアを誇っており、AMD Radeonはその後塵を拝している。(Intel Arcはまだ黎明期なのでここでは割愛する。)
筆者自身は2018年からRX 570、RX Vega 56、RX 5700XT、RX 6900XT、RX 7900XTXと5世代にわたってRadeonを使ってきた。この5年間Radeonを使ってきて困ったことは数知れない。今回はその中でも発生頻度が多かった不具合、Radeonを使っていて気になる点を書いていく。ただし、この記事に書かれている不具合がどのRadeon環境のPCでも起きるわけではないし、Radeonが一切だめだということを言いたいわけではないことには留意していただきたい。
筆者のPCのスペックは以下にまとめておく。
ドライババージョン
目次
実際に起こったこと
1つ目はクロックが安定しないこと。Radeonではコアクロック、メモリクロックともに1MHzという非常に細かい単位でクロックを制御している。これにより、Radeonはアイドル時に5W程度と非常に少ない消費電力を実現できるのだが、ゲームでは結構困る問題が起こる。それは負荷が低いときにクロックが上がりきらず、フレームレートが安定しないというものだ。これに関してはゲームの設定を上げれば大体の場合は改善する。ただ、Minecraftなどそもそもゲームの負荷がそこまで高くないタイトルや、相性が良くないタイトルだと設定を上げても効果が薄い。5年以上変わってないのでこれが改善するという期待はできないだろう…
実際にMinecraftを用いてどのような挙動をするかを録画してきた。このように負荷が軽いゲームでは性能を最大限発揮することができない。
2つ目は安定しないハードウェアエンコーダだ。皆さんDiscordは使っているだろうか?ゲーマーなら一度は触ったことがあるという人が多いだろう。Discordではボイスチャット中に自分のゲーム画面を配信できるのだが、配信中ときどき途切れてしまうことがある。これに関しては再度配信し直すくらいしかできないのが困りどころだ。デコーダーにも問題がある。RX 6000シリーズまではそもそもハードウェアデコーダーが4K60FPSまでしか対応してなかった。GeForceでは2016年に発売されたGTX 10シリーズから8K60FPS動画の再生に対応していた。RadeonもRX 7000シリーズからはAMD Radiance Display Engineとなり、ハードウェアエンコーダ、デコーダーともに8K60FPSまで、そしてAV1コーデックにも対応したのだが、4K60FPSの動画をYouTubeで再生しているときにシークバーをいじると再生されるのに少し時間がかかる。筆者は普段Firefoxを愛用しているため、Firefox特有の現象の可能性もあったことから念の為Chromeでも試しておいたが、結果は変わらなかった。RX 9000ではAMD Radiance Display Engineが改善されたとのことなのでどうなるかはわからない。
YouTubeにある8K60FPSの動画を再生したときのタスクマネージャーのVideo Codec Engineの様子だ。使用率がRTX 4090と比べても高いことが見て取れる。
3つ目は一部のゲームで描画に不具合が起こることだ。基本的にゲーム開発者は最もユーザー数の多いGeForceに焦点を合わせてゲームを開発している。そのため、Radeonでゲームをプレイすると稀に描画に不具合が起こることがある。筆者がプレイしたことがあるゲームでなおかつ有名なタイトルだと、Overwatch2では、AMD Softwareから設定できるゲームのテッセレーションモードをAMDの最適化にしている場合、フレームレートが極端に高いときにUIが見えなくなることがある。他にもApex LegendsではDirectX12でプレイしていると、ところどころ謎の光源の反射が発生してしまうことがある。AMDのVulkanドライバには不具合があり、これも修正されていない。ゲーム中に上記のような不具合が起きてしまう可能性は頭の片隅においておいてほしい。
現在は発生していないが、以前筆者の環境で起こった描画バグを撮影した動画を2つ掲載しておく。1つ目の動画では断続的にフリッカーが発生している。画面が高速で点滅するため、見る際は注意していただきたい。2つ目の動画は振り向いたときにGPUの使用率が急激に低下したことでスタッターが発生している。
4つ目はCUDAに対応しているソフトウェアがそのままでは使えないことだ。最近はAIブーム、そのAIソフトに特化した演算にはCUDAが必要だ。Radeonでもできなくはないが、WindowsでCUDA互換の機能であるROCmを使うためには非常に手間がかかる。例えば、Stable Diffusion WebUIをCUDAを使った場合と同じように使おうとすると、まずWSL2をインストールする必要がある。そのうえでコマンドライン上で必要なソフトウェアをインストールしたうえで起動する必要性がある。仮にそこまでやって起動しても、悲しいことにRX 7900XTXでもRTX 4070Tiにも劣る生成速度しかでない(Toki SDXL BenchmarkをStable Diffusion WebUI Forge版で走らせたところおおよそ3.6it/sだった)。VRAMの使用効率も悪く、SDXL系のモデルだとVRAMが足りなくて生成できないこともある。そしてWSL2という仮想環境で動かしている以上、メインメモリの使用量も馬鹿にならない。
実際にWSL2でUbuntuを実行し、そこにROCm版のPyTorchをインストールしてStable Diffusion WebUI Forgeを実行しているときのタスクマネージャーの様子だ(1枚目)。Forge版なのでメモリやVRAMが標準よりも少なくても実行できるものだが、それでもたくさん使っている。モデルの準備中にメモリの使用量は35GB以上にまでなっていた。2枚目はAutomatic1111版を使用した場合のタスクマネージャーだ。VRAMは完全に使い切ってしまっているしCompute 0の使用も不安定だ。速度はForge版の3.6it/sに比べその半分程度の1.64it/sしか出なかった。
5つ目はVRでのお話だ。筆者はVRヘッドセットとしてPimax Crystalという高画質機を使用している。解像度は5760×2880、リフレッシュレートは120Hzと非常にPCに負荷のかかる製品だ。このようなヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を使用してVRChatをやっていると結構困ることが起きる。相性が悪いのか筆者の環境ではVRChatを起動すると結構な高頻度でドライバがタイムアウトする。こうなると再度VRChatをVRモードでやるには、それに関係するソフトウェアの再起動が要求される。(筆者の場合はPimax Crystalを繋ぐためのPimaxPlay、Pimax Crystalのアイトラッキングのデータを取るためのBroken Eye、Steam本体、SteamVR、VRChatとなる)
そして再起動したとしても再びドライバがタイムアウトすることは何度もあった。
ほかにも、VRChatの設定でアンチエイリアスをx2だとしても入れている場合、ミラーをつけた場合にフレームの残像のようなものが発生する。VRChatではミラーを多用するため、このような現象は看過できない。ただし、筆者のHMDは冒頭にも述べた通りPimax Crystalで、より一般的なHMDであるMeta Quest 3の場合ではここまで高負荷にならないし、Pimaxのソフトウェア自体の問題の可能性もあるということは理解しておいてほしい。
※追記:先述のHMDの残像の件だが、AMD SoftwareからVRChatにおいてAnti-Lagを無効化したところ大幅に減少した。意外なところに罠があった。ただそれでもCPU負荷が高くなると残像が多少発生してしまう…
その他気になる点
6つ目はワットパフォーマンスの悪さだ。これはAMDの悪いところで、少しでもパフォーマンスを見せようとかなりギリギリまでクロックや電圧を上げている。そのため、デフォルトでは非常に消費電力が多くなっている。それなのにファンの設定は静音性重視で回転数が低めに設定されており、かなり熱が籠りやすい。一部のサイトでは、GPUの低電圧化をおすすめしているところもあるが筆者はあまりおすすめしない。特にRadeonを初めて触ると言う人はなおさらだ。電圧を下げれば確かに消費電力や発熱は減るし、その余裕分ブーストクロックも上がるのだが、同時にドライバがタイムアウトする可能性も高くなる。そのため、ファンの設定を調整するくらいに留めておくのが無難だ。
7つ目はRX 7900シリーズのリファレンスモデルで発生した不具合だ。筆者がいつもPC関連の雑談をしているDiscordサーバーで、RX 7900XTX及びRX 7900XTのリファレンスモデルを購入した人がいたのだが2人とも不具合を引いていた。その内容が、冷却に用いているベイパーチャンバーに不具合があり、低負荷時でもコア温度は50~70℃程度なのにホットスポット温度が115℃にも達してしまうというものだ。いくらファンを最大速度で回してもホットスポット温度が限界まで行くのは変わらない。これではまともに使えるとは言い難く、RX 7900XTXを買った人の方は初期不良交換をしたのにもかかわらずまた不具合を引いていた。冷却性能的にも各社から出ているカスタムクーラーを採用したモデルのほうが高く、リファレンスモデルを積極的に選ぶのは控えておいたほうがいいだろう。
8つ目は初期ドライバの安定性とパフォーマンスだ。Radeonは発売されて時間が経ってからドライバの品質が成熟してくる傾向にある。また、製品自体の値段も発売当初は割高で、少しずつ値段が下がっていく傾向が年々続いている。そのためRadeonは発売直後に買うよりも、1年程度経って情報が拡充し、ドライバがある程度改善されてから買うほうが好ましい。しかし新製品のパフォーマンスが最大限発揮できずに世代交代目前になってまともになることもあり、消費者にとっては悩ましい選択を迫られることになる。
9つ目はRadeonの情報量の少なさだ。RadeonはRX 6000シリーズがある程度GeForceと拮抗した性能を叩き出した功績によって、今でこそ最低限の情報は日本語でもそれなりに出てくるようになった。しかしそれでも最大のシェアを誇っているGeForceと比べるとその数は雲泥の差で、日本語で検索してもヒットしない情報もある。そのためトラブルが発生した場合にその内容を調べる難易度も高い。英語やドイツ語の記事を見ても解決に至らない場合もある。それ以外にも一般的な不具合を調べるにしてもある程度PCのトラブルシューティング能力が求められる。そのためRadeonはおすすめしにくいグラボとなってしまっている。
10個目はカスタムクーラーを搭載したサードパーティ製のグラフィックボードの選択肢がGeForceと比べて限られている点だ。基本的にグラフィックボードメーカーは需要が見込まれるNvidiaのグラフィックボードに全力を注いでおり、AMDのモデルでは最上位シリーズが無いなんてこともある。デザインの選択肢も限られてくるため、好みのグラフィックボードを探すのが少し難しいかもしれない。ただAMDのボードしか作っていないSapphireやXFXといったメーカーのグラフィックボードもあるのでここは一長一短ではある。
あとがき
今回Radeonに対して筆者が思っている不満点を可能な限り書き出してみた。実際Radeonにもいいところは色々ある。どんなゲームでも使えるフレーム補間機能AFMF2、値段あたりのVRAM容量、VRAM帯域の広さ、ライバルに対するコストパフォーマンスの良さ、少ないアイドル消費電力。これらの特徴をみて「Radeonを使ってみたいけど…」という人はこの記事を読んで、それでも大丈夫という自信を持てるなら買ってもいいと筆者は考える。今後Nvidiaに拮抗できる製品を作ることができるかは不透明ではあるが、Radeonを応援したいという人や、
トラブルが好きな物好きな人は今から使ってみるのもいいだろう。余談になるが筆者がRadeonに乗り換えたのにはちゃんと理由がある。当時筆者はGTX 1060にWQHDのモニターとFullHDのモニターを組み合わせて使っていたのだが、ウィンドウモードで動いているアプリケーションがとにかくぼやけて表示されるという問題に苛まれていた。その問題の根本的解決のために乗り換えたのが筆者がRadeonを使い始めたきっかけとなる。個人的にはIntel Arcが2代目にしてとてつもない性能向上を果たしたのでちょっと期待している。AMDとはいい勝負ができると思うし、そうなればRadeonも本気を出してくれるだろう。
For the Glory of AMD!
A_Z_Kornoha