【最新世代はスゴかった!】5製品で比較!Core i5のゲーム性能は、10世代~13世代でどう変わったのか?
近年、CPUの多コア・高クロック化とそれに伴う性能向上が著しい。第6世代から続く"Skylake"の系譜をようやく脱した第11世代Coreプロセッサ(2021)以降、Intel製CPUは世代を追うごとに大きく進化している。特にキャッシュ周りには容量増加という分かりやすいアップデートが頻繁に入り、コア性能の向上と相まってゲーミング性能は飛躍的に向上しているはずだ。
では、実際にどのくらいの性能向上がみられるのだろうか?それを明らかにするため、第10世代~第13世代の4世代にわたるCore i5を合計5モデル用意し、各CPUにおいて主にゲームプレイでの性能比較を行った。
基本情報
まずは、今回の検証対象である5つのCPUの基本仕様をおさらいしておこう。
モデル名 | Core i5-10400 | Core i5-11400 | Core i5-12400F | Core i5-13400F | Core i5-13600K |
CPU世代 | 第10世代 | 第11世代 | 第12世代 | 第13世代 | 第13世代 |
コードネーム | Comet Lake-S | Rocket Lake-S | Alder Lake-S | Raptor Lake-S | Raptor Lake-S |
コアアーキテクチャ | Comet Lake | Cypress Cove | Golden Cove + Gracemont | Golden Cove + Gracemont | Raptor Cove + Gracemont |
製造プロセス | 14 nm | 14 nm | Intel 7 | Intel 7 | Intel 7 |
コア数 | 6 | 6 | 6 | 6 P-Core + 4 E-Core | 6 P-Core + 8 E-Core |
スレッド数 | 12 | 12 | 12 | 16 | 20 |
ブーストクロック | 4.30GHz | 4.40GHz | 4.40GHz | 4.60GHz (P) / 3.30GHz (E) | 5.10GHz (P) / 3.90GHz (E) |
ベースクロック | 2.90GHz | 2.60GHz | 2.50GHz | 2.50GHz (P) / 1.80GHz (E) | 3.50GHz (P) / 2.60GHz (E) |
L3キャッシュ | 12.0MB | 12.0MB | 18.0MB | 20.0MB | 24.0MB |
L2キャッシュ | 1.5MB | 3.0MB | 7.5MB | 7.5MB + 2.0MB | 12.0MB + 8.0MB |
PBP (PL1, TDP) | 65W | 65W | 65W | 65W | 125W |
MTP (PL2) | – | (154W) | 117W | 148W | 181W |
対応メモリ | DDR4-2666 | DDR4-3200 | DDR5-4800 / DDR4-3200 | DDR5-4800 / DDR4-3200 | DDR5-5600 / DDR4-3200 |
PCI-Express | PCIe 3.0 x16 | PCIe 4.0 x20 | PCIe 5.0 x16 + PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x16 + PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x16 + PCIe 4.0 x4 |
では、新しいものから順に簡易的な紹介をしよう。まずは第13世代「Raptor Lake」からCore i5-13600K。本稿で扱うCPUで唯一、末尾のアルファベットとして「K」が付与されているモデルである。そこからもわかるようにオーバークロックが可能な倍率ロックフリーモデルだが、もともとの動作クロックが高いためオーバークロックをしない定格運用であっても優れたパフォーマンスを発揮する。「K付きCPUはオーバークロックしなくてはならない」と思っている方も多いが、定格で使う上でもメリットがあるということは強調しておきたい。
Core i5-13600Kは6つのPコアと8つのEコアで構成された、14コア20スレッドのCPUだ。Pコアには最新のRaptor Cove、EコアにはGracemontが採用されている。Raptor Coveは前世代のGolden Coveをベースに改良を施したものであり、具体的には動作クロックの向上、Pコア・EコアクラスタのL2キャッシュ増量、対応メモリ速度の向上(DDR5)などが挙げられる。特にPコアのL2キャッシュは1コアあたり1.25MBから2MBに増量されており、マルチスレッド性能やゲーミング性能の向上に寄与するとされている。動作クロックは最大5.1GHzと非常に高い値で、先に述べたL2キャッシュの増量の恩恵もあって良好なパフォーマンスを叩き出してくれることだろう。
次に、同じく第13世代「Raptor Lake」からCore i5-13400Fだ。こちらは6つのPコアと4つのEコアを備えており、全体で10コア16スレッドのCPUとなっている。ただ、Core i5-13600Kとは同じ第13世代ながら第12世代のコア(Golden Cove)が使われていることは注意すべきポイントだ。つまり簡単に言えば、Core i5-13400Fは同じ世代のCore i5-13600Kよりも前世代のCore i5-12600Kに近い存在であるということである。EコアはGracemontを採用している。
細かいことを言うと、今回検証に使用したCore i5-13400FはB0ステッピングでCore i5-13600Kと同じRaptor Coveの個体だ。L2キャッシュ容量はGolden Coveに合わせられているが、実際には性能や電力特性に僅かな差が存在するため、全てのCore i5-13400Fで本検証と同じ結果が得られるとは断言できない点に留意されたい。
3つ目は第12世代「Alder Lake」からCore i5-12400F。第12世代では「Eコア」の概念が登場したが、このモデルにはEコアは搭載されておらず、従来通り6コア12スレッドのCPUとなっている。そのコアにはGolden Coveが採用されており、前世代から飛躍的な電力効率の向上を遂げている。ソケットはLGA1700に切り替わり、始めてDDR5やPCIe 5.0をサポートした(PCIe 5.0対応はGPU向けのx16レーンのみ)。デスクトップCPU市場におけるIntel復活の鍵となった第12世代は、いったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
4つ目は第11世代「Rocket Lake」からCore i5-11400である。前世代と同じく6コア12スレッドのCPUで、CPUコアはCypress Cove。長く続いたIntel 14nmプロセスで製造された最後の世代だ。現在でも主流のDDR4-3200やPCIe 4.0に対応したことが大きなポイントだが、競合(AMD Ryzen 5000シリーズ)に対して後出しの製品であるにもかかわらず性能面・消費電力面で劣っていたり、H410・B460(一部のH470・Z490)では動作しなかったりと、なかなかに不遇な世代でもある。しかしながら、ゲーム性能という観点で見れば第10世代から進化していることは確実であり、検証結果を読み込んでいくうえでは前後世代との性能差に注目していきたいところだ。
最後に、第10世代「Comet Lake」からCore i5-10400だ。Core i5として初めて6コア12スレッドの製品が登場した世代であり、前世代と比較して主にマルチスレッド性能が向上した。CPUコアはComet Lakeと呼ばれ、Intel 14nmで製造されている。Comet Lakeの設計は2015年に発売されたSkylake(第6世代)を踏襲しているため、いくらか改良が加えられているものの実質的に9年前の設計であるといっても過言ではない。そのためPCIeは3.0止まり、M.2 SSD向けのCPU直結PCIeレーンも用意されておらず、コアあたりのL2キャッシュ容量も256KBと、どこをとっても前世代的である。そんなCore i5-10400だが、設計が一新された第11世代以降に対してどこまで喰らいついていけるのかが見ものだ。
検証環境
今回の検証にあたっては以下の環境を使用した。
OS | Windows 11 Home 22H2 | ||||
CPU | Intel Core i5-13600K | Intel Core i5-13400F | Intel Core i5-12400F | Intel Core i5-11400 | Intel Core i5-10400 |
CPUクーラー | DeepCool AK400 | ||||
メモリ | G.Skill F5-7200J3445G16GX2-TZ5RS (DDR5-4800 2x16GB) | CENTURY MICRO CE16GX2-D4U3200HXMP40 (DDR4-3200 2x16GB) | |||
マザーボード | GIGABYTE Z790M AORUS ELITE AX (Rev. 1.0) | ASUS ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI | |||
ビデオカード | GIGABYTE GeForce RTX 3060 Ti EAGLE OC D6X 8G (GeForce RTX 3060 Ti GDDR6X) | ||||
SSD | Samsung PM9A1 1TB (PCIe 4.0×4) | ||||
電源ユニット | Antec NeoECO GOLD NE750G (750W 80PLUS GOLD) |
CPUクーラーは「DeepCool AK400」で統一。Core i5-13600Kで試したところ、性能を十分に発揮できていたことから問題ないと判断し採用した。マザーボードはそれぞれのCPUの性能を最大限発揮できるよう、"Z"チップセットのゲーミンググレードを採用。BIOSの設定は変更せず、メーカー独自の定格を超えて自動でブーストする機能がオンの状態で検証を行った。なお、用意したマザーボードの仕様により11世代以前(DDR4)と12世代以降(DDR5)でメモリが異なってしまっているが、これについてはご容赦いただきたい。ビデオカードは「GeForce RTX 3060 Ti (GDDR6X)」を使用。通常のRTX 3060 TiよりもVRAMが強化されており、場面によってはRTX 4060 Ti超えのパフォーマンスを発揮するモデルだ。GPUが頭打ちになることでCPUの性能差がうまく現れない可能性もあったが、Core i5の検証なのだからミドルレンジ帯のビデオカードが最も参考になるであろうと判断し採用した。RTX 4070を購入する資金を捻出できなかったわけでは決してない。決してだ。
検証結果:世代ごとに着実な進化
さて、今回扱うCPUの概要や環境についての説明が終わったところで、早速検証のフェーズに入っていこう。
非ゲームアプリケーション
まずは各CPUの基本的な性能を把握するため、非ゲームアプリケーションでの性能を比較する。ただし、本稿はゲーミング性能の比較に主眼を置いているため、ここでの検証は最低限としている。
CINEBENCH R23 (レンダリング性能)
はじめに、グラフ1に示したレンダリング性能を図る定番ベンチマークソフト「CINEBENCH R23」の結果からチェックしていこう。
最新かつTDP125W枠のCore i5-13600Kはさすがに速く、マルチスレッドでは24,044ptsという驚異的なスコアを残した。これはかつてのハイエンドデスクトップ向けCPU「Core X」シリーズ最上位であるCore i9 10980XE (18C36T) に匹敵するもので、いちCore i5が出してよいスコアではない。「ほとんどの人はCore i5-13600Kを買えば満足できる」という話を聞くことがあるが、この値を見れば納得だ。
65W枠の4製品については、世代を重ねるごとに順当に性能がアップしていることを確認できる結果となった。Core i5-10400では8,041ptsだったところ、Core i5 11400は10,000ptsの大台を突破。そこからCore i5-12400Fの間でも同程度の性能向上がみられる。Core i5-12400FからCore i5-13400Fは、Pコアこそほぼ据え置きではあるものの、「Skylake相当」とされる4つのEコアが追加されたことによって約28%ほどスコアがアップした。
シングルスレッドに目を向けると、これまたCore i5-10400からCore i5-11400の間で約27%、Core i5-11400からCore i5-12400Fの間で約21%ほど性能がアップしていることがわかる。それぞれの最大クロックにはほとんど差がないことから、この性能向上はIPC (サイクルあたりの命令数) が向上した結果であるといえる。一方で、Core i5-12400FからCore i5-13400FはPコアのアーキテクチャがGolden Coveのまま変わっておらず*、最大周波数も0.20GHzほど向上しただけであることから、シングルスレッド性能に大きな差はないようだ。
動作クロックが最大5.10GHzと比較した中では最も高く、さらにPコアが新アーキテクチャであるRaptor Coveに刷新されたCore i5-13600Kについては、シングルスレッドスコアは1,974ptsと高い値を記録した。2,000ptsの大台にこそ乗ることはできなかったものの最新世代として非常に優秀なスコアであることに間違いはなく、シングルスレッド性能が重視されるアプリケーションにおいては高いパフォーマンスを発揮してくれることだろう。
検証した中で最も古い第10世代のCore i5-10400とTDP65W枠で最新の第13世代のCore i5-13400Fを比較すると、マルチスレッド性能は2倍弱、シングルスレッド性能においてもほぼ1.5倍と大きな差があることがわかる。さらに14コア20スレッドかつ最大5.10GHzで駆動するTDP125W枠のCore i5-13600Kと比較すれば、マルチスレッドではほぼ3倍、シングルスレッドでは1.7倍以上とその差はさらに広がる。
これだけでも、旧世代から最新のLGA1700プラットフォームに乗り換える価値があると言えてしまいそうだ。
*検証に使用したCore i5-13400FはB0ステッピングのため正確にはGolden Coveではない
PassMark (基本性能)
次に、様々なテストを行った上でCPU性能を総合的に評価するベンチマーク「PassMark PerformanceTest 11.0」の結果をグラフ2に示した。ただし、ここでは複数の項目がある中から総合スコアである「CPU Mark」とシングルスレッド性能を測る「CPU Single Threaded」のみを抜粋してグラフ化していることを断っておく。というのも、項目によって絶対値が大きく異なるせいで、ひとつのグラフにまとめてしまうと非常に見づらくなってしまうのだ。
PassMarkの結果もCINEBENCH R23に比較的近いものとなった。唯一異なるのが、Core i5-11400とCore i5-12400FのCPU Markスコアに大きな差がみられないことである。CPU Single Threadedをはじめとして複数の項目でスコアが向上していたのにも関わらず、どうして総合評価があまり振るわないのだろうか。
Core i5-11400とCore i5-12400Fの結果を項目ごとに確認してみると、グラフ2に掲載したCPU Single Threadedのほか、浮動小数点演算のテストであるFloating Point Math、素数を見つける速度をテストするPrime Number、そして物理演算のテストであるPhysicsのスコアは大幅に向上しているのに対して、逆に整数演算テストのInteger Math、圧縮テストのCompression、暗号化テストのEncryption、拡張命令テストのExtended Instructionsはほとんど変わらず、文字列をソートするSortingテストに至ってはスコアが下がるという結果になった。そしてCPU Single Threadedを除くこれらの項目すべてが、同じPコアを採用しているはずのCore i5-13400Fで大幅に高いスコアを記録しているという点も興味深い。Eコア追加による恩恵は想像以上に大きいのかもしれない。
ゲームベンチマーク
さて、非ゲーム系のベンチマークはこれくらいにして、早速ゲーム系のベンチマークへ入っていくこととしよう。なお、本稿では専用のベンチマークソフトによって検証を行ったものは「ゲームベンチマーク」とし、実際にゲームを起動して検証を行った「ゲームプレイ」とは別のカテゴリとして分類している。
3DMark Time Spy (基本ゲーム性能)
グラフ3は、ゲーミング性能を図るベンチマークとして定番の「3DMark Time Spy」スコアを示したものである。Time SpyはWQHD解像度(2560×1440)で実行されるベンチマークであり、このスコアはDirectX 12におけるゲーム性能の指標となる。
Time SpyにはGPUの性能を示すGraphics ScoreとCPUの性能を示すCPU Score、そして総合的なゲーミング性能を示すTime Spy Scoreと3つの指標がある。Graphics Scoreは各CPU間でほとんど差がない一方で、CPU ScoreはPassMarkにかなり近い傾向を示しており、それが総合評価であるTime Spy Scoreに影響を及ぼしていることが見て取れる。
ところで、今回検証に使用したGPUはPCIe 4.0×16接続のGeForce RTX 3060 Tiである。比較したCPUの中ではCore i5-10400が唯一PCIe 4.0に対応しておらず、PCIe 3.0×16での接続となる。それが影響してGPUの性能を完全に出し切れない可能性も考えられたが、Graphics Scoreが他と遜色ないことから鑑みるに、GeForce RTX 3060 TiはPCIe 3.0×16でも十分な性能を発揮できていることがわかる。足回りが古いCore i5-10400だが、それが原因で性能が出ないということはなさそうだ。逆に言えば、今後のベンチマーク等でCore i5-10400のスコアが低かった場合、それは帯域不足などが原因ではなく純粋にCPUの力不足ということになる。
FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレ
次に、CPUやメモリ性能の差が顕著に表れることで有名な「FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレ」(以下FF14ベンチ)のスコアをチェックしよう(グラフ4)。今回は使用したGPUがGeForce RTX 3060 Tiであることを勘案し、4K解像度でのテストは行わずにFHD(1920×1080)とWQHD(2560×1440)でのみ計測を行った。画質設定はどちらも「最高品質」とした。
ここでもやはりCore i5-13600Kの突出した性能とCore i5-10400の旧世代感が目立つ。一方で、これまでCore i5 12400Fに対して大きくリードしていたCore i5-13400Fはあまり振るわない結果となった。これまではCPUをフルに活用するベンチマークばかりだったために追加された4つのEコアが活きてきたが、実際のゲームではEコアの存在意義は小さいということなのだろうか。
FINAL FANTASY XV: 漆黒のヴィランズ
続いてナンバリングがひとつ進んだ「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK Ver 1.3」(以下FF15ベンチ)。FF14ベンチと比較するとGPUへの負荷がより高まり、それによってCPU性能の差がスコアに与える影響が比較的小さくなった。FF14ベンチと同様に、画質設定は選択できるプリセットの中で最も高い「高品質」とし、WQHDとFHDの2つの解像度で実行した。その結果を示したのがグラフ5である。
FF15ベンチの結果は、これまでとはまた異なるものとなった。GPUへの負荷が高まった結果、GPUがボトルネックとなってWQHDではCPUによる差があまり出なかったのに対し、GPUへの負荷が低くなるFHDではCPU性能による差がはっきりと表れている。具体的には、Core i5-10400とCore i5-13600Kを比較した場合に、WQHDでは5%弱の差にとどまっているが、FHDではその差が14%ほどまで広がっている。
また、FF14ベンチではCore i5-12400Fと同程度のスコアをマークしていたCore i5-13400Fがこちらではワンランク上のスコアを出している点も興味深い。他メディアの検証でも、FF15ベンチは(Pコアはもちろん)Eコアが多いCPUでも高いスコアが出ている例があるため、純粋なマルチスレッド性能が効きやすいのかもしれない。
ゲームプレイ
専用のベンチマークソフトは良くも悪くも「素直なスコア」が出ることが多い。毎回同条件で計測できるという性質上、手軽に公正な結果を得ることができ、こうして記事に掲載するには最も適している。しかしながら、実際のゲームプレイがベンチマークソフトで得られた結果通りであるかというと、そうでないことが多い。例えば、新作の国産MMORPG「BLUE PROTOCOL」はCPU依存度が高いゲームだが、専用ベンチマークソフトのスコアはCPUを変えてもあまり変化しない。何が言いたいかというと、実際にゲームをプレイしてみることで初めて見えてくる傾向があるということだ。そこで、本稿ではこの「ゲームプレイ」という項を設け、実際にゲームを起動して計測したデータをもとにゲーミング性能の差を露わにしていこうと思う。
Forza Horizon 5
「ゲームプレイ」のトップバッターはカジュアルレーシングゲームの「Forza Horizon 5」だ。このゲームにはベンチマークモードが備わっており、ベンチマークソフトと同じように毎回同じ条件で計測ができる。どちらかというと「ゲームベンチマーク」に分類されそうだが、最終的に表示されるものはベンチマークソフトにありがちな「スコア」ではなく「平均FPS」であり、それも実際にプレイした時と比較して大きく乖離していないことから本稿では「ゲームプレイ」に分類した。
グラフ6はForza Horizon 5において「WQHD高設定」「FHD高設定」「FHD低設定」にてベンチマークモードを実行した際、完走後に表示される「平均FPS」を集計したものである。
FHD低設定においては、Core i5-10400、Core i5-11400、Core i5-12400Fの間でフレームレートに大きな差が生じている。また、Core i5-13600Kは平均224fpsとかなり高い値を叩き出しており、CPUパワーがフレームレートに大きな影響を与えていることが確認できる。一方でCore i5-13400Fは振るわず、Core i5-12400Fよりも平均fpsが下がる結果となった。Pコアが第12世代と同じGolden Coveであるとはいえ、全く同じベースクロックと0.2GHz高いブーストクロックが設定されているCore i5-13400Fの方が低くなることから、このゲームではEコアの追加が良い方向に作用していないと推測できる。とはいえその差は軽微でありゲームプレイに甚大な影響を与えるものとは言えず、Eコア搭載CPUを避ける理由にはならないだろう。
FHD高設定、WQHD高設定ではどうだろうか。これらの設定はGPU負荷がより高まり、FHD低設定とは傾向が異なってくる。Core i5-12400F、Core i5-13400F、Core i5-13600Kの3製品で計測した際はGPUがフルパワーを出しきっており、それがボトルネックとなってCPUによるフレームレートの差がほとんど見られない。一方、旧世代のCore i5-10400やCore i5-11400はそれよりも1~2段ほど低くなっており、GeForce RTX 3060 Tiの性能を存分に発揮できていないことがうかがえる。解像度や設定を下げることによるフレームレートの上り幅という観点で見ても、計測した中で最も古いCore i5-10400は他と比べてかなり小さく、CPUがボトルネックとなってフレームレートが頭打ちになっている状況が見て取れる。
ここで「ボトルネック」という言葉を使用したが、実は筆者はこの言葉があまり好きではない。よくある質問に「このCPUとGPUはボトルネックになりますか?」というものがある。だがしかし、そんなのは何をやるかによって変わってくるものである。そして、この世に「絶対にボトルネックが発生しないPC構成」など存在しない。例えば、同じ構成でもゲームAではCPUがボトルネックになるのに対してゲームBではGPUがボトルネックになることだってある。そこでボトルネックを突き詰めてしまうと、Core i9-14900KやRyzen 9 7950X3DにRTX 4090を組み合わせるほかなくなってしまう。
さらに意味不明なのは、ボトルネックを解消してバランスの良い構成にするために「CPUやGPUのグレードを落とす」行為である。バランスの良い構成を求めて、全体の性能を下げているのだ。元々考えていた「バランスの悪い構成」で200fps出るところを「バランスの良い構成」にしたことで160fpsまで落ちるなんて、何も嬉しくないだろう。細かいボトルネックを突き詰めていったところで時間の無駄だと筆者は考える。
Apex Legends
次に、人気バトルロイヤル「Apex Legends」でのフレームレートを比較していこう。このゲームはふつう、射撃訓練場で計測が行われることが多い。 しかしながら筆者は過去の経験から射撃訓練場ではCPU性能の差が明確に現れないことを知っていたため、今回に関しては実際にマッチに入りながらフレームレートの計測を行った。マップや降下場所、移動ルートや移動中の視点の向きなど様々な点に細心の注意を払ったが、それでも完全に公平とは言えないデータになっている点には留意いただきたい。そのため、先ほどのHorza Horizon 5ではCore i5-12400FとCore i5-13400Fの僅かな差について言及したが、実戦で計測を行ったApex Legendsにおいてはその程度は誤差として扱う。
Apex Legendsもこれまでと同様にFHD、WQHDと2つの解像度で計測した。シーズン15のアップデート以降、起動オプションのコマンドライン引数にコマンドを追加すればDirect X12での起動が可能になったが、ベータ版であることから採用を見送りデフォルトのDirectX 11を使用。ビデオ設定は低をベースにテクスチャストリーミング割り当てやテクスチャフィルタリングを最大化した「カスタム設定」を採用した。そしてその結果をまとめたのがグラフ7(FHD)、グラフ8(WQHD)だ。平均フレームレートは青色、下位1%は黄色で表している。
前述の通り、大手メディアによる検証の多くは射撃訓練場で行われており、その結果から「Apex LegendsはCPUによる差がないゲーム」として知られている。しかしながら、実戦での計測を行うと全く違うものが見えてきた。FHDでは平均・下位1%ともにCore i5-13600Kがトップに君臨し、次点にCore i5-13400FとCore i5-12400Fがほぼ横並びで位置している。そしてそこから少し離れてCore i5-11400、大きく離れてCore i5-10400という結果になった。
Core i5-13600Kは下位0.1%のフレームレートが非常に優秀で、計測の誤差を考慮してもCore i5-13400FやCore i5-12400Fと比較して明確に高い。最も低かったCore i5-10400と比較すると、その差は2倍近くにもなる。平均フレームレートは大きく変わらないように見えるが、これはApex legendsのフレームレート上限が300fpsだから。300fpsに張り付いてしまう場面があり、それが平均フレームレートの伸びを抑える原因となっていた。
Apex Legendsをプレイしていてフレームレートが伸び悩んでいる場合は、グラフィックボードの交換を検討するだけでなく、CPUについても見直してみるとよさそうだ。もしかするとCPUを最新世代に交換するだけで劇的な改善がみられるかもしれない。
Battlefield 2042
続いては、Apex Legendsよりも重いFPSゲームとして「Battlefield 2042」である。あまり人気のあるゲームではないが、今回はCPU負荷が高いゲームの代表として採用した。AIマッチで計測を行ったため比較的安定した条件下でのデータにはなるが、Apex Legends同様に多少の誤差が生じている可能性は考慮する必要がある。
計測にあたり、ビデオ設定はプリセット「低」、DLSSやNVIDIA Reflexはオフとした。その結果がグラフ9(FHD)、グラフ10(WQHD)である。ここでも先ほどと同様、平均フレームレートは青色、下位1%は黄色で表している。
グラフ9に目を向けると、Core i5-13400FとCore i5-12400Fの平均フレームレートに無視できない差が生じている。この2つのCPUの大きな違いは4つのEコアがあるかどうかというところで、Pコアのアーキテクチャに差はない。そしてこれまでの傾向から、実際のゲームプレイにおけるEコアの影響はほとんどなさそうである。が、Battlefield 2042 (FHD) においてはその限りではなかった。それはどうしてだろうか。
答えは「CPU使用率」である。検証中のCPU使用率を確認したところ、6コアのCore i5-12400F以下では95%付近を推移していたのに対し、追加で4つのEコアを搭載しているCore i5-13400Fは80%前後、さらに高性能なCore i5-13600Kでは70%前後と、余裕のある値を見せていた。本稿においてこれまでゲーム性能に有意な影響を与えているようには見えなかったEコアが、ここにきて効果を発揮したことは中々興味深い。しかしながら、これは「Eコアのおかげ」というよりも「マルチスレッド性能に余裕ができたおかげ」であり、Pコアが2つ増えても同じ結果が得られると推察できる点は記しておきたい。
BLUE PROTOCOL
最後に、冒頭でも少し触れた国産MMORPG「BLUE PROTOCOL」でのフレームレートを比較しよう。実は、このゲームは当初、実際に起動してフレームレートの計測をする予定はなく、専用のベンチマークソフトを利用して評価するつもりだった。しかし、いざプレイしてみると負荷のかかりかたがベンチマークソフトと乖離していたことから、急遽ベンチマークソフトの利用をやめ、MSI Afterburnerでの計測に変更することにしたのだ。Apex LegendsやBattlefield 2042と同様、実戦で計測を行ったため完全にフェアなデータとは言えない点には留意いただきたい。
そんなBLUE PROTOCOLであるが、GPUへの負荷が比較的高いことから今回の計測にあたってはプリセット「中画質」を採用。ゲーム序盤のミッション「巨竜の爪痕」に6人パーティで参加した際の、スタートからクリアまでのフレームレートを計測した結果をグラフ11にまとめた。平均フレームレートは青色、下位1%は黄色、下位0.1%は橙色で示している。なお、計測に時間を要してしまうことからFHD解像度での計測は割愛している。
さて、このグラフでもっとも目を引くのは、オレンジ色で示した下位0.1%フレームレートだろう。ご覧の通り、最新のRaptor Coveを採用しておりなおかつ動作クロックも高水準なCore i5 13600Kが頭一つ抜けた値を記録している。下位1%や下位0.1%の値が高ければ高いほど、一瞬のカクつき(スタッター)の発生が少ないことを意味し、快適なゲームプレイが期待できるのだ。逆に、設計の古いCore i5-10400は下位0.1%の値が一桁にまで落ち込んでいるうえ、平均フレームレートも100fpsを大きく割っている。実際、Core i5-13600Kの検証中は序盤から終盤まで安定してプレイできていたのに対し、Core i5-10400の検証中は重い場面で「カクカクッ」となってしまうことがあった。
一方で、第11世代のCore i5-11400から第13世代のCore i5 13400Fまでの3製品についてはさほど大きな差がみられなかった。強いて言えば、Eコアが追加されたCore i5-13400Fの下位0.1%フレームレートがやや高めに出ているが、有意な差とするにはやや物足りない印象だ。
ゲームプレイ時の消費電力
さて、ここまで様々なベンチマークソフトやゲームを実際に動かし、CPUごとのフレームレートをお見せしてきた。それでは締めの前に、ゲームプレイ時の各CPUの消費電力値を比較しておこう。
常に高いCPU使用率を記録していた「Battlefield 2042」プレイ時と、CPU使用率が比較的大人しかった「BLUE PROTOCOL」の測定結果を以下に示した。本稿グラフ9とグラフ11のフレームレート測定を行った際、それと同時に計測した消費電力の平均値と最大値をそれぞれグラフ12とグラフ13に示している。
末尾に"K"がついていることからも推察できるように、コア数が多く高クロックで動作するCore i5-13600Kは、Battlefield 2042では120W前後と高い値を記録した。特に、最大値はPBP(プロセッサ・ベース・パワー)である125Wを超えた129.2Wにまで上昇している。BLUE PROTOCOLではCPU使用率が低かった影響か、平均61.7W、最大84.8Wとかなり落ち着いた値を見せているが、それでも他のCPUに比べれば依然として高いことがわかる。
性能が高いぶん消費電力もかなり高いという、言ってしまえば当たり前の結果になった。ただ、これでも上位のCore i7やCore i9と比べればマシなほうで、まだ扱いやすい部類ではあるだろう。
残る4モデルはどれもTDP/PBPが65Wであり、実際にCore i5-11400を除く3製品はかなり落ち着いた消費電力となった。特に4つのEコアが追加されたCore i5-13400Fについては、コア数が増えたにもかかわらずCore i5-12400Fよりも明確に低い値を示した。Windows 11がコアの特性に合わせてタスクをうまく振り分けることが、CPUとしての消費電力低減に寄与しているのだろうか。
さて、問題はCore i5-11400である。第11世代Coreプロセッサの消費電力が高いことは周知の事実であるが、なんとここで平均・最大ともに100Wを超えてしまった。TDP/PBP65Wの他CPUに比べて、1.5倍以上の電力を消費していることになる。
これまでの検証では、多くのゲームでCore i5-12400Fに近いパフォーマンスを発揮しておりそれなりに優秀に見えたCore i5-11400。しかし、その世代差は消費電力という項目にハッキリと表れた。
まとめ:CPU世代はゲームの快適性を大きく左右する!
以上の検証結果から、CPUの世代差はゲーム性能を大きく左右することが分かった。特に、最新世代のCore i5-13600Kはどんなゲームタイトルでも安定して高いパフォーマンスを出すことができていたし、マルチスレッド性能でも他の追随を許さない圧倒的なスコアを見せつけた。Core i5-13600Kはほとんどのゲーマーを満足させうる、高い総合力を持つCPUだ。DeepCool AK620のような高性能空冷クーラーで余裕を持って冷やすことができる点も魅力であり、CPU選びで迷ったらまずお勧めしたいモデルといえる。
Core i5-13400FとCore i5-12400Fの比較では、Eコアの存在が良い方向に作用するゲームもあればそうでないゲームもあり、結論付けるには悩ましい結果となった。ただその差は微々たるものであるということ、そしてBattlefield 2042のように6コア12スレッドでは限界のあるゲームが存在することから、処理能力に余裕のある6P+4EのCore i5-13400Fを選択する価値は十分にありそうだ。
Core i5-11400については、一部で12世代以降に後れをとりながらも全体的にそこそこのパフォーマンスを発揮できていた。消費電力や発熱はかなり高いが、ゲーム性能に大きな不満を持つことは少ないのではないだろうか。PCIe 4.0に対応していたり、CPU直結のM.2スロットが利用できたりと足回りも十分。現状で性能不足を感じていなければ今すぐ最新世代に買い替える必要はなさそうだ。ただし、性能不足を感じているのなら同じソケットの上位CPU(Core i7-11700Kなど)に交換するのではなく、最新世代のCore i5(特にK付き)で組みなおすことを推奨したい。将来のCPUアップグレードを見据えるなら、Ryzen 7000シリーズもよい選択肢となるだろう。
4世代前となるCore i5-10400は、さすがに限界が見えてしまった。マルチスレッド性能から各種ゲーム性能まで最新世代との間に大きな差が生じており、一部ゲームではスタッターの発生も目視で確認できた。先にも述べたが、もし第10世代以前のCPUを使用していてゲームのフレームレートが低いことに悩んでいるなら、場合によってはGPUの前にCPUを交換すべきかもしれない。GPUを買い替えずともフレームレートが大幅に改善する可能性があることは、今回の検証結果から十分お分かりいただけたはずだ。
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記事大変興味深く拝読させて頂きました。
12世代から13世代への進化で一番大きく変化したのは、実はミッドレンジのi5である
というのは私も全く同意見ですね。正直i7系の内容に大きく近づくような大改良で、特にK付のSKUは素晴らしいの一頃ですね。
ゲームのようにマルチコアを使い切らないタイトルもある場合は差が少ないですが
動画配信+ゲームプレイなどでは充分違いは出るのではないかと思いました。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、第13世代のK付SKUは本当に素晴らしいものだと改めて感じました。「配信をするならCore i7以上」と言われ続けてきましたが、第13世代(特にCore i5-13600K)の登場によって「Core i5でも大丈夫だよ!」と自信をもって言える時代になったと思います。ワンランク上の体験を求める方には是非ともお勧めしていきたいですね。